こんにちは。
今回は野球の指標である「WAR」について解説します。
war?争い事は嫌だなぁ
と思ってしまった人はぜひこの記事で野球におけるWARを学んでみてください。
- WARとは同じポジションの代替可能な選手と比較してどれだけ勝利数を増やすことができたかを示します
- WARはWins Above Replacementの略称で「ウォー」と読みます
- WARが2.0ならレギュラークラス、6.0以上ならMVP級の選手です
- 投手と野手を同じ物差しで評価することができます
WARって何?
WARとは「同じポジションの代替可能な選手と比較してどれだけ勝利数を増やすことができたか」を表している指標です。
ここでいう代替可能な選手というのは「平均以下の選手」です。
例えば、1軍の控え選手や2軍から昇格させる選手のことですね。
WARが5.0の選手がいた場合は、代替可能な選手と比較して5勝の上積みに貢献したということになります。
なぜWARという指標が生まれたの?
WARができた理由は「投手と野手を含めて、全ての選手を同じ物差しで評価したかったから」です。
投手の評価指標と野手の評価指標は全然違います。
また同じ野手同士だったとしても、ポジションが異なったりプレースタイルが違ったりすればどちらの方が優れた選手かという評価を下すのは困難です。
WARではチームにどれだけの勝利をもたらしたかという指標で全ての選手を評価できるのが最大のメリットですね。
WARの算出方法は?
算出組織
WARの算出方法は、実は算出組織によって少し違います。
MLBとNPBでは主に以下の組織で算出が行われています。
- メジャーリーグ…FanGraphs, Baseball Reference
- 日本プロ野球…DELTA
メジャーリーグは2つの組織によってWARの算出が行われています。
差別化のため、FanGraphs版WARはfWAR, Baseball Reference版WARはrWARと呼ばれています。
日本は主にDELTAが算出を行っていますね。
野手WARの算出方法は?
WARの算出方法は各組織によって少し違いますが、野手WARはおおむね下記の5事項から成り立っています。
打撃評価+守備評価+守備位置補正評価+走塁評価+打席数補正評価
打撃力評価
WARの打撃評価にはwRAAを利用します。
wRAA=(wOBA-リーグ平均wOBA)÷1.24×打席
wRAAは「同じ打席数を平均的な打者が打つ場合と比較してどれだけ得点に上積みをつくったか」を評価できます。
ちなみにwOBAは以下の計算式で計算できます。
wOBA=(0.7×(四死球-敬遠)+0.9×(単打+失策出塁)+1.3×(二塁打+三塁打)+2.0×本塁打)÷(打席-敬遠-犠打)
wOBAは打者の攻撃力を測る指標です。
1打席あたりにどれだけチームの得点力増加に貢献したかを表しています。
とても煩雑な式ですが、係数の部分はシーズンによって変化しますので、上の式はあくまで一例として捉えてください。
守備力評価
WARの守備評価にはfWARの場合はUZR、rWARの場合はDRSが使用されています。
- UZR…同じ守備位置の平均的な選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表す
- DRS…同じ守備位置の平均的な選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表す
しかし参照するデータ元が違ったり守備ゾーンの分け方が違ったりするので必ずしも同じ数値にはなりません。
ただし守備率やエラー数のような指標よりは野手の守備力が反映されている指標になります。
守備位置補正評価
守備位置ごとに求められる守備能力や守備負担が異なるので下表の補正値を使用して守備位置補正評価をします。
FanGraphs、Baseball Reference、DELTAでそれぞれ補正値は異なります。
✔︎WARの守備位置補正表
データ組織 | FanGraphs | Baseball Reference | DELTA |
---|---|---|---|
捕手 | 12.5 | 9 | 18.1 |
遊撃手 | 7.5 | 7 | 10.3 |
二塁手 | 2.5 | 3 | 3.4 |
中堅手 | 2.5 | 2.5 | 4.2 |
三塁手 | 2.5 | 2 | -4.8 |
右翼手 | -7.5 | -7 | -5 |
左翼手 | -7.5 | -7 | -12 |
一塁手 | -12.5 | -9.5 | -14.1 |
指名打者 | -17.5 | -15 | -15.1 |
基準試合数 | 162試合 | 150試合 | 143試合 |
(出典:FanGraphs「Positional Adjustment」、Baseball-Reference「Position Player WAR Calculations and Details」、DELTA「守備位置補正」)
基本的に守備負担の大きい捕手と遊撃手の補正値が高いです。
逆に外野手や一塁手は守備負担が少ないので補正値が低く、指名打者は守備にすらつかないので守備補正のマイナスが最も大きいですね。
走塁力評価
WARの走塁評価には以下の3指標を使用します。
- UBR…平均的な選手と比較してどれだけ盗塁以外の走塁でチームの得点を増やしたか
- wSB…平均的な選手と比較してどれだけ盗塁でチームの得点を増やしたか
- wGDP…平均的な選手と比較してどれだけ併殺阻止でチームの得点を増やしたか
長ったらしく書いてしまいましたが、要するにUBR=走塁評価、wSB=盗塁評価、wGDP=併殺阻止評価ですね。
走塁評価と盗塁評価と併殺阻止評価の3点セットを合算して、走塁力評価がなされます。
打席数補正評価
打席数補正では打席数が多いほど高い評価がされます。
評価対象選手の打席数が多いほど、代替可能選手の打席を減らすことができるからですね。
打席数補正では以下の計算式が使用されます。
打席数 ÷ 600 × 20
おおよそ600打席立てばチームの20得点に貢献できるという計算です。
投手WARの算出方法は?
投手WARの評価はfWARとrWARで以下のように算出されます。
- fWAR…FIPを基に算出
- rWAR…失点率を基に守備指標DRSを考慮して算出
投手fWARの算出方法
投手のfWARはFIPをベースに算出します。
FIP=(13×被本塁打+3×(与四球+与死球-敬遠)-2×奪三振)/投球回+補正値
(補正値=リーグ全体の防御率-(13×被本塁打+3×(与四球+与死球-敬遠)-2×奪三振)÷投球回)
計算式は少し複雑ですが、計算式が意味しているのは「被本塁打と四死球と奪三振数のみで投手を評価する」ということです。
ゴロアウトやフライアウト、安打、二塁打などの野手が関与するプレーを除いて計算されます。
味方の守備能力に依存しないFIPという指標を基にfWARを計算しています。
投手rWARの算出方法
fWARがFIPを元に算出する一方、rWARは失点率の元に算出します。
ただし失点率は味方の守備能力に左右される指標なので、守備指標のDRSを用いて失点率を補正します。
WARの評価基準
WARの評価基準は下記のようにランク付けされています。
評価 | fWAR | rWAR |
---|---|---|
MVP | 6.0以上 | 8.0以上 |
スーパースター | 5.0 – 6.0 | |
オールスター | 4.0 – 5.0 | 5.0以上 |
好選手 | 3.0 – 4.0 | |
レギュラー | 2.0 – 3.0 | |
先発メンバー | 1.0 – 2.0 | 2.0以上 |
控え | 1.0以下 | 0-2.0 |
リプレイスメント | 0未満 | 0未満 |
WAR0.0であれば平均的な代替選手、つまり1軍と2軍を行ったり来たりしているような選手レベルですね。
逆にWARがマイナスだとチーム状況にもよりますが「なんでその選手を出してるの?」と言われかねません。
まとめ
今回は以下の点に関してお話ししました。
- WARとは同じポジションの代替可能な選手と比較してどれだけ勝利数を増やすことができたかを示す
- 野手WARは打撃評価+守備評価+守備位置補正評価+走塁評価+打席数補正評価で計算する
- 投手WARはFIPか失点率を基に計算する
- WARが6.0を超える選手はMVP級の活躍ができる
WARは算出方法は複雑ですが、投手も野手もおなじ土俵で評価できる優秀な指標でしたね。
他にも野球に関する指標を記事にまとめていますので、ぜひのぞいてみてくださいね。